現代GP 

    文部科学省 現代的教育ニーズ取組支援プログラム

           −地域と連携したIT実践教育の展開−
 

まえがき

現代GP(現代的教育ニーズ取組支援プログラム)は文部科学省による大学教育改革支援事業のひとつで、社会的要請の強い政策課題に対応したテーマ設定*を行い、各大学から申請された取組の中から特に優れた教育プロジェクト(取組)を選定し、財政支援を行うことで高等教育のさらなる活性化の促進を目的としている.特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)が継続的に取組み実績をあげているものを対象にしているのに対し、現代GPは確実な計画なもとに新たな教育改革を図ろうとするものを対象としている.

*17年度のテーマ:@地域貢献(地元密着)、A地域貢献(広域展開)、      B知的財産権、C仕事で英語の使える日本人、D産学連携、Ee-Learning

17年度は申請504件で採択84件(採択率18%)であった.そのうち本取組みに関連する地域貢献(地元密着)は申請160件で採択27件(採択率16.9%)と厳しい選択が行われた.

平成17年度文部科学省の現代GPにおいて、神奈川工科大学の提案する「地域と連携したIT実践教育の展開―(副題)高齢者障害者の利用する地域情報マップの開発と運用」が採択された.この取組みでは、地域の方々と連携したマップつくりを実践的なIT教育に結びつけ、地域貢献と問題発見解決能力、人間性豊かな技術者を育成する新しい教育を狙いとしている.そして平成17年度10月、地域情報マップ推進プロジェクトを設立し、以来地域IT基礎教育、応用教育に取り組んできた.本稿では、3年計画の総括報告として、本取組の全体計画・実施概要について述べる.

 

本学現代GP全体計画

1 本取組の目的

本学のテーマは「地域と連携したITの実践教育の展開―(副題)高齢者、障害者の利用する地域情報マップの開発と運用」である.すなわち神奈川県厚木地域の高齢者、障害者の方々から寄せられた課題を神奈川工科大学と地域が連携し解決する活動を通じてITの実践的教育を行うことを目的としている.具体的には、高齢者、障害者の方々が安全安心して生活できる環境づくりの一環として、ITを活用した地域情報マップを本学、厚木市、地元IT企業と市民の連携したプロジェクトを設立し、平成17年度より3年計画で開発運用する.本取組において本学情報学部情報ネットワーク工学科と工学部福祉システム工学科(平成18年度より、ロボット・メカトロニクス学科に名称変更)が連携し、地域調査登録などの実習を中心とするITリテラシー教育(地域IT基礎教育プログラム)とシステム構築に関わる専門教育(地域IT応用教育プログラム)を実施する.このように地域の課題を教育に結び付けることにより大学と地域との結びつきを一層強め、地域活性化に貢献するとともに、問題発見解決能力と豊かな人間性を持つ技術者育成の教育効果を得るものである.

 2 本取組の採択理由(文部科学省、原文のまま)

地域社会における弱者である高齢者・障害者の抱える課題を解決することを目的として、大学が地域の行政・企業などと連携し、IT を活用した学生の実践的教育を行う取組で、大学の建学理念である地域貢献と感性豊かな人材育成の具体化を目指しています.
 既に厚木市内においてIT を活用した地域情報マップ作成に取組んでおり、安全安心のまちづくりに学生が主体的に参画する基盤が構築されつつあることから、プログラムの実現可能性は高いと考えます.
 IT のシステム構築に関わる専門教育(地域IT 応用教育プログラム)と実習を中心とするITリテラシー教育(地域IT 基礎教育プログラム)が設定されており、教育指導体制は十分に整備されています.学生が主体的に参画することにより、地域社会との繋がりを体験し人間力の向上が実現されます.
 また、取組みに参画した学生の評価に地域の(外部の)声が反映されるシステムとなっており、教員による学内評価と併せて教育効果を正当に評価できる体制が整備されています.
  対象とする地域社会との連携も密接であり、安全安心なまちづくりの観点から地域活性化への貢献も明解に示されています.本取組がモデルとなり、他地域への波及効果が現れることを期待します.

 3 本取組における教育プログラムの概要

(1)地域IT基礎教育プログラム

本プログラムは、ITの基礎を勉強する学生に対し、ITがどのように利用できるか地域の課題を通して理解させ、今後のITの勉強の動機づけとなることを目的としている.具体的には情報学部情報ネットワーク工学科、工学部福祉システム工学科1学年(平成18年度よりロボット・メカトロニクス学科に名称変更)に設置しているITリテラシーの授業の中で地域情報マップつくりに関わる地域実習の形で実施する.ITリテラシーではパソコン操作法などの基礎を学ぶが、一通り基礎を習得した後、地域調査、情報登録など運用面に参加することにより単なる技術習得ばかりでなくITはどのように地域で利用できるか実践的に体得することが可能となる.

(2)地域IT応用教育プログラム

本プログラムは、ITの基礎をもつ学生に対し、地域の具体的課題を与え解決手法を実践することを目的としている.教員や企業技術者の指導の下、地域情報マップシステムに関わる設計・構築、利用面の向上技術などの研究を行う.具体的には情報学部におくプロジェクト研究プログラム*、または卒業研究等の一環として実施する.この際、プロジェクトに参加している企業技術者からの指導など学内では得られない幅広い知見や技術ノウハウの習得が可能となる.

*プロジェクト研究プログラム:学生が主体的にテーマを決めて研究し、その成果を評価して単位取得もできるプログラム

 4 実施体制

 地域と連携した教育プログラムを実現するため、本学と地域の産学公と市民が連携する厚木ITコンソシアムの中に地域情報マップ推進プロジェクトを設立する.プロジェクトにおいて計画の審議・承認、シンポジウム実施、成果報告書の作成を行うが、具体的推進にあたっては、プロジェクトに以下のグループ体制を組織する.

@全体企画グループ

 (全体企画、教育評価法など基本的事項)

A教育運用グループ

 (地域IT基礎教育プログラムの実施、教材類

  の作成、調査用品等の調達)

Bシステム構築グループ

 (地域情報マップのシステム構築、地域IT応用

  教育プログラムの指導)

C支援グループ

 (地域、大学関係プロジェクト支援)

Dホームページグループ

 (本取組の広報)

 

厚木ITコンソシアムは本学小宮教授(本現代GP代表責任者)が平成12年より代表を務めるITの市民利用を主として研究する産学公と市民からなる組織で、現在150機関、約250名が会員登録している.

 5 実施計画

 本取組は平成17年度より3年計画であり、主な実施計画は以下のとおりである.

(1)平成17年度:

プロジェクトの確実なすべり出しを目指す.

地域情報マップ推進プロジェクトによる体制の確立、地域IT基礎教育、応用教育の実施と課題の抽出、地域情報マップ基本システムの確立、など.

(2)平成18年度:

教育プログラム、マップシステムの本格化、充実化を目指す.

教育プログラムの改良充実、地域情報マップシステムの改良、利用面の向上、など.

(3)平成19年度:

マップシステムおよび教育プログラムの通常運用化、地域と連携した教育運用センターの準備を目指す.

以上の(1)〜(3)において、シンポジウムの開催、成果報告書の発行を通じて、評価方法の確立、他地域への普及を目指す.

 また、各年の年間スケジュールは以下のとおりである.

@ 5月〜6月 地域IT基礎教育プログラムの実施(マップづくりに関する地域実習)

A 4月〜2月 地域IT応用プログラムの実施(地域情報マップシステム関連の研究、年間を通して実施)

B 10月〜11月 グループによる地域情報マップ利用実験の実施

C 10月〜2月 学会発表および関連地域調査(国内、海外)を実施

D 11月〜12月 地域情報マップシステムの構築・改定

E 2月 地域情報マップシンポジウムの開催(毎年開催)

F 3月 地域情報マップ推進プロジェクト成果報告書の作成(毎年開催)

 

実施内容と成果の概要

(1)地域情報マップ推進プロジェクトの設立

本取組は平成17年度に採択され、同年10月に推進母体として本学と厚木市、地元企業、市民が連携する地域情報マップ推進プロジェクトを設立した.

(2)地域IT基礎教育プログラムの実施

情報学部情報ネットワーク工学科および工学部福祉システム工学科(平成18年度よりロボット・メカトロニクス学科と名称変更)の1年生を対象としたITリテラシーの授業の中で街の福祉情報、商店街情報、災害時の避難場所誘導案内の調査、情報登録、マップ作成を行う地域実習を実施した.学生はシステムの構築、調査登録にそれぞれ参加し、地域の方々と協力し、情報調査、データ入力を行った.学生が地域課題の解決に参加する経験を通してITの利便性、可能性を体験しIT教育の動機付けを行った. なお、平成18年度よりWeb上に地域実習の教材を掲載するe-Learningシステムを整備し、学生が自ら事前学習を進められる体制によりプログラムのさらなる充実化を図った. 本基礎教育プログラムは、ITリテラシー教育の一環として実施したが、単なるパソコンの操作法習得でなく、地域情報マップづくりの地域実習を通じて地域の課題に対してITはどのように利用できるか、地域情報調査登録の実習を通じて実践的に習得できたことから、IT教育の動機付けとして有効な教育効果が得られた.

これら地域実習の有効性は参加学生に対するアンケート調査に示されている.高齢者、障害者の方への支援として地域情報マップは3年間を通じ90%以上の学生が有効性を理解し、使い勝手や新機能とくにパソコン操作法、表示方法などにおいて改良方法の具体的提案があり、システムへ反映することができた.地域の課題について知識を持つ学生が実習前は20%程度であったが実習後は80%以上となり、地域に実際に出て、地域の人と行動することより、知識が広がり生きた勉強に繋がっていることが確認できた.この傾向は3年間ほぼ同様であった.また、この実習を経験し、この取組に興味がある、プロジェクトへ継続して参加したいという学生は約30%であり、年々積極的な学生が増加する傾向が現れ、着実な成果として根付いてきた.また、地域実習の事前準備として導入したe-Learningシステムにより、いつでもどこでも勉強できる体制としたため通常授業と補間の役割が充分機能した.実習前にほとんどの学生がアクセスし、しっかりした予備知識を持つ状態で実習に臨むことができたため、実習が滞りなく進むことでき、実習に対する理解力も向上した.さらにノートパソコンの習熟も自然と向上する効果やメールによる質問などに積極的な勉学姿勢の効果も現れた.

(3)地域IT応用プログラムの実施

主として情報学部、工学部高学年を対象とした卒業研究、プロジェクト研究プログラムの中で、システム構築に関わる技術課題を大学教員、企業技術者の指導のもと解決法を研究した. 毎年地域情報マップの機能向上、改善法など研究室内では得られない実践的研究テーマに対し、学生が主体的に参加し取り組み、学会発表、シンポジウムでの発表などの成果が得られた.平成19年度からは1年生の時地域実習に参加し、興味を持った学生もグループ研究を行った.このように本プログラムでは地域情報マップシステムの運用に関する具体的なテーマに対し、教員のきめ細かい指導、企業技術者の助言など従来の教室では得られない内容となり、学生に幅広い知見や技術ノウハウの習得が可能となった.

(4)地域情報マップ関連実証実験の実施

 完成した地域情報マップの情報の有効性、基本機能の使いやすさについて、平成19年度秋期に応用教育プログラムの一環として研究グループを構成し、高齢者、障害者の方とともにマップの利用実験を実施した.学生はその結果に基づき討論会を実施し、レポートをまとめシンポジウムで報告するとともにシステムの改良にも反映した. 自らのアイディアをシステムへ反映していくというPDCAの生きた教育とすることができた.

(5)学会、関連地域調査の実施

国内外のIT、福祉関連学会において本事業に関連する成果発表、先進技術の調査、他の地域における本事業に関連するプロジェクトやサービスなどの調査を行い、運用方法や実施内容に反映した. 応用教育プログラムにおける成果を学生が学会発表し、福祉やIT関連の他地域の先進的な取組の調査を行った.これにより学生の幅広い知識習得、自らのシステム改良やプロジェクトへの提案など、より高いレベルに向けた教育効果が可能となった.

(6)地域情報マップシステムの構築

(1)〜(5)での実施内容を反映したマップシステムを構築した.マップのハードウエア、地図データシステムは主としてシステム構築グループが担当した.これに地域実習による福祉情報、医療機関情報、イベント情報、商店街情報、災害時の避難場所誘導案内情報を登録する仕組みで、性能評価、使い勝手などの評価・改善結果を盛り込み基本システムを完成させた. マップは現在一般公開されているが、このシステムの評価を通じて、学生は自分たちの活動がシステムにどのように反映されたか、達成感とともに成果と問題点を学び取ることができた.そして改善点の提案と実行につながる生きたPDCAのサイクルを経験した.これは技術者として不可欠な要素であるが、従来の学内では十分達成できない実践的教育であり、本事業において実現できた成果である.

(7)継続的運用体制の確立

3年間にわたる教育プログラムの運用により、e-Learningの利用、地域の方々と活動する地域実習、厚木ITコンソシアムとの連携など企画立案から実践、アンケートによる教育効果評価など一連の体制を整備し、それぞれ実施要項を作成し、継続的運用体制を確立した. H19年度は17年度第1回の地域実習に参加した学生が3年生となり、その中から有志が学生リーダ、学生委員として自主的に参加した.このように地域実習に参加した学生の中から活動の重要性を認識し継続して参加する学生が出てきた.また、研究面でも高齢者、障害者の立場に立ったマップの改良案を提案し、自らプロジェクトへ参加表明する学生も出てきた.

これら学生の自主的活動は本取組の大きな成果であり、今後とも継続してできるだけ多くの学生がリーダ、委員として参加するような環境を整備していく.

(8)地域情報マップシンポジウムの開催

本学、厚木市、地元企業、NPO(あつぎ障害者自立生活センター)、市民が参加し、毎年2月取組状況、成果、課題、について報告・討論を行った.19年度は現代GPの最終年度にあたるため、ITの動機付けとして本教育プログラムの効果に関する議論、評価方法の改善、今後の継続的運用体制などを中心テーマとした.また、地域活性化につながるマップの有効性評価、改善点、システム保守体制について議論した.これら議論には3年間にわたり協力していただいた地域の方々、自治体、企業技術者、本学教員ばかりでなく学生有志も多数参加した.また、本シンポジウムを本取組の他大学、他地域への公表・普及の場とするため、近隣市町村、他大学にも案内し参加いただいた.

参加学生からは地域に出て初めて分ったこと、車椅子の経験など刺激や動機につながったことを発表し、地域の方々と討論することにより、様々な角度からものの見方、コミュニケーション能力など技術者として必要なことを学んでいく効果につながった.また、高学年の学生からは応用教育プログラムでの成果発表を行い、参加した企業技術者との技術討論などにより専門的知識や理解力の向上に役立った.また、パネル討論では地域からの参加者からさまざまな意見を聞くことより新しい知見を得るチャンスとなり多く学生によい刺激を与えた.

(9)地域情報マップ推進プロジェクト成果報告書の作成

本取組はユニークで初めての試みであるので、本年度の実施状況、3年間の記録を成果報告書として残した.併せて地域調査の模様、研究プロジェクトの成果を今後の参考資料、学生向け教材とするため記録ビデオを制作した.また昨年に続き学生有志が編集作業にも加わり、作業分担した.企画から完成までのプロセスを経験することより、企画力、考察力、文章表現方法などの能力が養成された.

(10)活動の広報

本取組に関しては大学ホームページに現代GP関連のページを設け、取組進捗状況を広くお知らせした.学生もホームページ担当として記事制作に参加した.また、大学の広報誌KAITに3年間にわたり状況報告記事を掲載した.なお、朝日新聞や日刊工業新聞にも地域と連携する教育改革として取り上げられた.

 

以上、(1)〜(10)に示す3年間の活動により、本学の教育目的である問題発見解決能力と豊かな人間性を有する技術者の育成に向けた教育プログラムの継続的運用体制を確立した.

あとがき

以上述べたように本学の現代GPは「地域と連携するITの実践教育の展開」の   テーマのもと、3年間活動し充実した教育内容と体制を確立できたと判断している.これに基づき第3回地域情報マップシンポジウムにおいて20年以降の継続運用体制について検討し、その結果、本取組みの趣旨に沿って以下の計画内容で継続実施していくこととなった.

(1)大学内に地域情報マップ推進プロジェクトを継続設置する.基本的にはメンバー体制は19年度の体制を継続する.厚木ITコンソシアム、厚木市など関係機関との連携関係も維持する.

(2)教育プログラムはIT動機付け教育(ITリテラシー)に関わる基礎教育プログラムを情報ネットワーク工学科、ロボット・メカトロニクス学科1年生を対象に地域実習(本厚木駅周辺)を春期に実施する.実習方法・内容は19年度と同様とする.また、秋期においては、応用教育プログラムとして主として高学年を対象に地域情報マップ関連のグループ研究を実施する.実施方法については19年度と同様とする.教育プログラムの準備・評価は教育運用グループが担当する.

(3)地域情報マップシステムの維持・更新はシステム構築グループが担当し、技術面の保守体制も現状を維持する.

(4)教育評価、教育プログラムの改善など意見交換の場として毎年年度末にシンポジウムの開催、活動記録として成果報告書の発行、記録ビデオの制作を行う.

 

現代GP継続実施内容

1.平成20年度:現代GPとして活動

      基礎教育プログラムを情報ネットワーク工学科、ロボット・メカトロニクス学科1年生を対象に地域実習(本厚木駅周辺)を春期に実施

2.平成21年度:現代GPとして活動

   基礎教育プログラムを情報ネットワーク工学科、ロボット・メカトロニクス学科1年生を対象に地域実習(本厚木駅周辺)を春期に実施